裁判の闇 原発訴訟はモンスターシステムに邪魔される 巨大詐欺を守っている存在は誰か 霞ヶ関の詐欺はここまで見抜かれている!?

霞ヶ関の現役官僚による内部告発小説として18万部を超え、2013年のベストセラーになった『原発ホワイトアウト』の著者、若杉冽さん。既に、所属先の官庁内で「誰が書いたのか?」と犯人探しが始まっているという。

「怖くないですか?」と聞くと、「自分以外にも書きそうな奴は霞ヶ関の中にも何人かいるので」と笑いながら返ってきた。しかし、一方で報復人事などが個人に跳ね返ってくる可能性は否定できないと一瞬顔を曇らせた。

小説は、一昨年12月に行われた衆議院選挙後のニッポンを舞台に、原発再稼働を虎視眈々と狙う電力業界、経済界、政界のトライアングルを克明に描いた内容になっている。犯人探しが行われるという事は、内部告発小説として、あまりに“真を食っていた”ということなのかもしれない。小説の中に出てくる人物の一部は、明らかに、実在する人物を連想する描き方になっている。

例えば、脱原発を訴える山本太郎参議院議員を思わせる人物は「山下次郎」。原発利権の存在についても指摘する等与党内で一匹狼として闘う自民党の河野太郎衆議院議員を連想させる人物は「山野一郎」。さらに、再稼働に向けた安全審査の申請を出したい東京電力に対して、事故が発生した場合の安全対策の不備を鋭く追求していた新潟県の泉田知事を思わせる人物は「新崎県、伊豆田知事」。

若杉氏は、なぜ自身の立場があやうくなるかもしれないリスクを背負ってまで内部告発小説を世に出そうと考えたのか?じっくりと聞いた。

堀:

どうして、自らの立場を危うくしながらも、小説を書こうと思ったのですか?

若杉:

2011年3月11日以降、我々は福島の経験をして国民全体も脱原発を望んでいる声が多いと思います。2度の国政選挙を経て、何事もなかったかのように政権も業界も原発を動かそうと動き出しています。年々、民意と離れてきてしまっているのではと感じています。その中で私が直接見聞きしている事実と間接的に見聞きしている事実、これを元に、いかに国民不在で再稼働を原発推進に向かった進んでいるのかをできるだけリアルに国民の方に伝えたかったのです。本当は、山崎豊子さんのような小説家に書いてもらいたかったのですが、つてもなく知り合えずにいたので、自分で書く事にしました。

堀:

ただ、内部告発をするのであればマスコミにリークをしたり、雑誌や新聞などに寄稿するという手もあったかと思いますが、なぜ小説という形にしたのですか?

若杉:

えー、いろんな形で、その意思決定に直接、間接的に関わってきた訳ですが、どうしても政治家は評判、官僚は出世、業界はそれが会社の利益になるということでがんじがらめになってしまっていて、そういう中でこれを止められるのは国民の力しかないので、そういう政・官・財の現状をそのまま伝えるのは小説という形の方がいいのだろうと。直接見聞きした事だと、公務員の守秘義務に関わります。間接的に見聞きした事だと、報道機関は裏がとれないと流せない。でも、間接的に見聞きした事が、裏がないからといって真実ではないわけではなく、真実を伝えるためには小説をやむにやまれずというか、押さえられない気持ちで書いてしまいました。原発推進に向けて、悪巧みが進んでいるのを知りながら、それを国民に伝えないほうが怖いし、良くないと思いました。