【奴隷の鎖自慢】『新・霊界物語 五十二話』

奴隷は、
奴隷の境遇に慣れ過ぎると、
驚いた事に
自分の足を繋いでいる鎖を
お互いに自慢を始める。
どっちの鎖が光ってて
重そうで高価か、などと。
そして鎖に繋がれていない自由人を
嘲笑さえする。
だが奴隷達を繋いでいるのは
実は同じたった1本の
鎖にしか過ぎない。
そして奴隷は、
どこまでもただの奴隷に過ぎない。
過去の奴隷は、
自由人たちによる力に征服され、
やむなく奴隷に身を落とした。
彼らは、たとえ奴隷になっても
決してその精神の自由まで
譲り渡すことはなかった。
その血族の誇り、
父祖の文明の偉大さを忘れず、
隙あらば逃亡し、
あるいは反乱を起こして、
労働によって鍛え抜かれた肉体で、
肥え太った主人を血祭りにあげた。
しかし現代の奴隷は、
自ら進んで奴隷の衣服を着、
首に屈辱のヒモを巻き付ける。
そして何より驚くべきことに、
現代の奴隷は、
自らが奴隷であることにすら
気付いてすらいない。
それどころか彼らは、
奴隷であることの中に
自らの唯一の誇りを
見い出しさえしている。

(米国の黒人詩人アミリ・バラカ
(旧名リロイ・ジョーンズ
1968年、NYハーレムにて)